日本情報経営学会 第69回 全国大会開催のご案内
統一テーマ:「地域開発への情報経営学的接近:地域の新たな課題を見据えて」
昨今,地域活性化の切り札として,ICTの重要性が声高に叫ばれてきた. 大学もまた,地方を拠点として情報教育を行う情報系大学・学部・学科の新設・増設を行ってきた. だが,これまでの傾向は,いずれもICT「産業」の振興のための取り組みに終始してきたきらいが否めないのではなかろうか. 事実,地域開発にICTを利用する表面的取り組みに囚われている間に,新たな地域課題として少子高齢化,生産労働人口の減少,産業の空洞化,災害・防災対策,情報化の進展による一極集中の加速化などが生み出されている. こうした眉間の課題に対して,ICTがいかに寄与しうるかについて議論が尽くされてきたであろうか. ICT「産業」への人材供給以上の展望を描けなかった情報系大学・各部・学科もまた,軒並み苦戦,縮小,撤退を余儀なくされている. 結局のところで「地域産業の振興のためのICTの活用振興」に向けての人材教育を行ってこなかったからである.
この問題の一端には,地域活性化の概念それ自体が雲をつかむがごとく,曖昧な状態にあったことがあろう. とはいえ,地域活性化がまったく理論的でなかったというわけではない. むしろ,地域活性化を論じる実践家たちの議論を繙けば,強力なリーダーシップ,ビジョンの共有,人的ネットワーク(ネットワーキング),実践コミュニティの形成などなど,情報経営学徒にとっては「おなじみの概念」が並んでいる. しかし,これらの概念がいささか表層的に使われ,経営学の学術語に包まれ覆われるほどに,肝心な地域活性化の意義が曇っていくように思われるのである. 勿論,我々は,このことを地域活性化の実践の失敗の所以と解しているのではない. むしろ,われわれ研究者の側が地域活性化という言葉を十分に咀嚼できず,対象の固有性を掴めずにいるが故に,それらの議論に深みと実践的含意を十分に持ち得てこなかったのであるまいか.
本大会の統一テーマは,あらためて学問として地域活性化に接近することにある. そのために,敢えて,石垣島という離島を議論の舞台に選んだ. 「足下に泉あり」と言われるように,自らの周辺にこそ,取り組むべき「地域」の課題を見いだすべきとの批判もあろう. しかし,喧伝されるようにICTが距離の終焉を実現するのであれば,離島にこそ「ICT振興と地域活性化」を考えるためのヒントを見いだすことが出来まいか. そのような視点から,主催校という概念を超えて,石垣島での全国大会を企画させて戴いた.
離島ゆえに参加者の利便性を鑑み,大会期間をいささか長めに設定している. 土日のいずれか1日のみ参加というわけにはいかないだろう,と考えたからだ. まず11月7日(金)には,統一論題ないし自由論題の前哨戦となる研究会を開催することにした. 既に触れたように,今のところ地域活性化という実践的テーマに対して,経営学の概念が利用されながらも,経営学として正面から挑んだ理論的視座はない. 研究会では,大学院生を含んだ若手の研究者を中心に,地理的に離れた協働を支えるテレワークや組織市民行動,あるいは地域開発によって潜在的に不利益を被る「声なき利害関係者」など,地域活性化の実践に適用すべき経営学の理論的視座を吟味する. 8日(土)は,地域活性化に対する産学官のアプローチを比較する統一論題報告を中心に,広く地域の方々にも一般公開して議論を行う予定である. 9日(日)は,通常の全国大会として自由論題報告,特定自由論題報告,課題研究報告などを配置する. 10日(月)は,地域活性化の現実を見学していただきたいと考えている. 地域活性化の行方は,既に様々な組織に所属し,利害を持った人々が埋め込まれたコンテキストに大きく影響される. これが,公式組織へ参加することを前提として,管理実践を論じてきた既存の経営学とは決定的に異なる点だと考えられる. 八重山エリアには,大小さまざまな離島が存在するが,地域活性化の多様性を観察する絶好の対象でもある. できれば,三島以上の離島を訪れて,それぞれの差異を生み出しているコンテキストと管理実践の違いを「自らの目と手と足」で比較してほしいと願っている.
共催、協賛、後援
共催 | 琉球大学観光産業科学部 |
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協賛 | 地域デザイン学会 |
後援 | 地域活性学会
沖縄観光コンベンションビューロー |